
いいか、若いの……遥かいにしえには、D&Dというテーブルトークゲームがあったのじゃ。 
 安田均が翻訳して、日本にRPGを広めるのに尽力したものじゃ。  
 まだファミコンすら存在しなかった時代に、RPGはトークゲーム(会話形式の、想像力を働かせる知的ゲーム)という形でマニアックにも息づいておった。   
 他にも富士見書房からD&Dシリーズのゲームブックが刊行され、RPGの裾野を広げるのに一役買ったものじゃ。   
 わしが若かりしころじゃった…… 
 わしは友人との話でD&Dの話題に花が咲き、それならばみんなで盛り上がろうということになった。 
 弟も連れたわしは、友人宅に招かれ、3人でいざD&Dの初体験と相成ったわけじゃ。   
 「えっ? 初体験?」と、友人と言った。 
 「おれたち、D&Dやったことないよ。とりあえずマニュアル読んだだけ!」と、わしら兄弟。 
 「実はおれも初心者なんだよ……とりあえず手探りでやるしか!」 
 「じゃあ、ゲーム・マスター(トークゲームの進行役。スポーツの審判みたいな人)はおまえに任せる!」 
 「イヤだよ俺! ゲーム・マスターなんか恥ずかしくってできない。君こそやってくれ!」 
 「何言ってる。俺だってゲーム・マスターなんかできないよ。そもそもお手本を見たことないもん!」 
 「いや、そこをなんとか……」 
 「いや、恥ずかしいッ! そこを君が……」   
 結局、その日のD&Dはオジヤンになったのは言うまでもあるまい。 
 シャイボーイの集まりではトークゲームにはならぬ!!
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