プロフェッショナル・マスク買い占め職人

東京は池袋。
寝静まった深夜の住宅街で、ある一人の男の戦いが今日も始まる。

（テロップ）マスク買い占め職人　76歳。

（ここで一旦BGM）
（咳き込みながらジャンバーに手を通し、玄関の扉を閉め、自転車にまたがり夜の住宅街を疾走する姿）

マスク買い占め職人の朝は早い。
5時間並んで一人前、とされるこの世界に置いて、彼は常に朝3時には起きて、7時間は並ぶ。
「常にスギ薬局の列のトップを維持する。もはや相手より自分との戦いです」
笑う額に汗が光る。
すでに備蓄は15万枚に達した。
「怖いといえば怖い。あと何枚買えるか。わからない。その時どうなるかも。ただ、続けたいです。売られる限り」
そう話す彼にプロの矜持を見た。

（買い終えて、店の駐輪場で携帯で話をする姿）
------どうしました？（ディレクターの声）
「買い占め仲間からです。あの、穴場。見つかったって。今日はもう一軒並びますよ（ニヤッ）」

------何故そこまでしてマスクを買うんです？
「・・そうね・・・そこにマスクがあるからじゃないかね・・」
（ここでスガシカオ流れる）

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ドキュメンタリー72でも取り上げて欲しいわ

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千年に一度世界に三人生まれる太陽丘の女神を探せ！

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（ポーンというBGM）
画面に薬局の自動ドアに「早朝からのマスク入荷を停止致します」と書かれた貼り紙のアップ。

ナレーター「全国的なマスク不足。なかなか購入しづらい状況となったことから、ドラッグストアなどではさまざまなトラブルが生じていたという。」

貼り紙を見て、呆然とする職人。
------どうしましょう？（ディレクターの声）
「・・・いやぁ・・・こうなったら、薬局とワシらの戦いですよ、もう」
------マスクが販売されていないことに腹を立て「俺コロナ」と言った高齢者が逮捕される事件まで起きてますからねぇ
「（声を荒げて）こっちだって必死ってことですよ！・・・」

ナレーター「翌日は朝から雨だった。4月というのに東京の気温は真冬並みとなった。」
住宅街を雨の中、傘をさして薬局に向かう職人。
------入荷しますかねえ？
「根比べですよ（ニヤッ）根比べ。ゴホッゴホッ（激しく咳き込む）」
------あれ、マスクはしないんですか
「我々の世代はね根性が違うんですよ、マスク？もったいねえからつけない」

雨の景色の中に消えて行く職人の後ろ姿。
ナレーター「その職人を見たのは、それが最後だった。」

（ポーンというBGM）
（黒バックにテロップ）「新型コロナウィルス肺炎により、一週間後死亡」

（映像は部屋の奥に残された、天井まで積み上げられた大量のマスクの箱）
（ここでスガシカオ流れる）

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あと、一歩だ〜け前に進も〜

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早朝からのマスク入荷を停止した薬局の成れの果て

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トイレットペーパー、ティッシュの買い占め職人の成れの果て

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